2018年6月19日火曜日

7月の世界ランキングの予測(女子シングルス)

6月の世界ランキングでは多くの中国女子選手がランキングポイントを伸ばしてランキングを上げました(詳細はこちらのページをご覧ください)。しかし、7月はまたこれらの中国女子選手や日本女子選手の世界ランキングが大きく変動する可能性があります。

これは、昨年の6月にジャパンオープンと中国オープンのポイントの高いワールドツアープラチナ大会が2回あり、これら2大会でポイントを獲得した日本選手や中国選手が多いのですが、これらの獲得ポイントは6月中に失効するため7月のランキングポイントには算入されないためです(詳細は2018年の新ランキングポイントシステムの解説をご覧ください)。

一方、今月6月で獲得できるシニアランキングに大きく影響を与えるポイントはワールドツアーのジャパンオープンが主です(正確にはチャレンジシリーズの平譲オープンと大陸カップ戦の北中南米カップがありますが、出場選手が限られトップの順位には影響はないと思います)。

そこで、6月に失効するポイントと、ジャパンオープンでの獲得ポイントを踏まえて、7月の世界ランキングを予測してみたいと思います。

まず、現在の22位までのランキングと今回のジャパンオープンの結果と獲得ポイントをまとめてみます。

ランキング 選手名 現Rポイント 算入数 ジャパンOP最終結果 獲得ポイント
1 陳夢 16509 8 不出場 0
2 朱雨玲 16299 8 不出場 0
3 王曼昱 15849 8 準優勝 1620
4 石川佳純 14905 8 準々決勝 1260
5 劉詩雯 14139 8 準決勝 1440
6 伊藤美誠 13955 8 優勝 1800
7 平野美宇 13418 8 準々決勝 1260
8 鄭怡静 13171 8 準々決勝 1260
9 馮天薇 13060 8 1回戦* 270
10 陳幸同 12957 8 準決勝 1440
11 孫穎莎 12806 8 不出場 0
12 丁寧 12759 7 不出場 0
13 杜凱栞 11940 8 1回戦* 270
14 佐藤瞳 11604 6 2回戦 1080
15 徐孝元 11369 8 2回戦 1080
16 早田ひな 11115 8 2回戦 1080
17 顧玉婷 10932 7 1回戦 900
18 ポルカノバ 10663 8 不出場 0
19 サマラ 10624 8 不出場 0
20 加藤美優 10440 8 2回戦 1080
20 李皓晴 10440 8 2回戦 1080
22 芝田沙季 10401 8 不出場 0

ここで、「Rポイント」はランキングポイントを指し、「算入数」は現在ランキングポイントに算入されている大会数を指します。ランキングポイントには最大8大会算入できるので「8」に満たない場合は獲得ポイントをそのまま加算できますが、最大算入数の8大会に達している場合は新たに獲得したポイントが現在算入している8大会の内の最低ポイントより高い場合は、この最低ポイントと交換して算入することになります(詳細は新ランキングポイントシステムの解説を参照)。

次の表では、ジャパンオープンでの獲得ポイント以外に、現在のランキングポイントに算入されている獲得ポイントで6月に失効するポイント(「失効ポイント」)、現在算入されている8大会の内の最低のポイント(「最低ポイント」)、失効したポイントに替わって算入される可能性のある最大未算入ポイント(「次点ポイント」)と、その結果算出した7月の予測ランキングポイント(「新Rポイント」)を挙げています。今回、最大2大会(2017ジャパンオープンと2017中国オープン)のポイントが失効し最大の未算入ポイントだけでなく次に大きい未算入ポイントも算入される可能性があるためそのポイント(「次々点ポイント」)も挙げています。

ランキング 選手名 現Rポイント 失効ポイント 最低ポイント 次点ポイント 次々点ポイント 新Rポイント
1 陳夢 16509 3825(2) 1734 1575 1260 15519
2 朱雨玲 16299 1575 1440 1250 900 15974
3 王曼昱 15849 1800 1785 1575 750 15624
4 石川佳純 14905 0 1620 1575 1554 14905
5 劉詩雯 14139 1800 900 300 0 12639
6 伊藤美誠 13955 1575 -1575 1440 1350 14180
7 平野美宇 13418 3150(2) 1350 1080 563 12608
8 鄭怡静 13171 1575 1200 1125 600 12856
9 馮天薇 13060 2925(2) 1350 1080 600 11815
10 陳幸同 12957 0 1350 1350 1350 13065
11 孫穎莎 12806 4275(2) 563 0 0 8531
12 丁寧 12759 2250 900 0 0 10509
13 杜凱栞 11940 0 1200 1080 1080 11940
14 佐藤瞳 11604 2700(2) 1260 1239 1080 11223
15 徐孝元 11369 1125 -1125 630 630 11324
16 早田ひな 11115 1350 1260 900 600 10845
17 顧玉婷 10932 0 900 0 0 11832
18 ポルカノバ 10663 1125 -1125 1080 1080 10618
19 サマラ 10624 1350 789 789 450 10063
20 加藤美優 10440 1125 900 720 563 10395
20 李皓晴 10440 1125 990 789 750 10395
22 芝田沙季 10401 1125 990 900 900 10179

ここで、失効ポイントの数字の後ろの「(2)」は2大会分の獲得ポイントであることを示します。また、失効ポイントが「0」の場合は6月に失効するポイントが現在のランキングポイントに算入されていない場合です。最低ポイントがマイナス表示されている場合は最低ポイントが6月の失効ポイントの場合です。「次点ポイント」や「次々点ポイント」が「0」になっている場合は現時点の算入大会数が8大会ぎりぎりまたはそれ未満の場合で、替わりに算入する獲得ポイントがない場合です。
例えば、孫穎莎は昨年のジャパンオープンで優勝、中国オープンで準優勝していたので、失効ポイントが「4275(2)」で2大会分のポイント4275ポイントが失効しますが、現在の獲得ポイントのある大会数が8大会ぎりぎりで替わりに算入する獲得ポイントがありません(「次点ポイント」と「次々点ポイント」が「0」)。また、今月に出場の大会はないため今年6月の獲得ポイントはなく、単純に現在のランキングポイント(12806)から失効ポイント(4275)を引いた結果の「8531」が7月の新ランキングポイントとなります。これは、今年6月の世界ランキングで36位相当のランキングポイントとなり大幅なランキングの下降が予測されます。

もう1つ単純な例として、陳夢はジャパンオープンに不出場で今年6月の獲得ポイントはありませんが、昨年のジャパンオープンと中国オープンでの獲得ポイントが「3825(2)」なので、替わりに次点ポイントと次々点ポイントの2大会分のポイントを算入する必要があります。7月のランキングポイントは以下の式で計算されます。

16509(現Rポイント) - 3825(失効ポイント) + 1575(次点ポイント) + 1260(次々点ポイント) = 15519

次に、平野美宇の7月のランキングポイントを計算してみます。
平野美宇は昨年のジャパンオープンと中国オープンはどちらも準々決勝敗退で獲得ポイントがそれぞれ1575ポイントでしたのでこの2大会分の3150ポイントが失効し無くなります。6月の次点ポイントは1080ポイント、次々点ポイントは563ポイントとなりますが、今年のジャパンオープンでの獲得ポイント1260ポイントがあるので、7月の世界ランキング計算時点で次にポイントが高いのは1260ポイント、次が1080ポイントとなりこれらを失効ポイントの替わりに算入することになります。

13418(現Rポイント) - 3150(失効ポイント) + 1260(獲得ポイント) + 1080(次点ポイント) = 12608

最後に、7月の予測世界ランキング順に並び替えてみます。
新ランキング ランキング 選手名 新Rポイント 現Rポイント 算入数
1 2 朱雨玲 15974 16299 8
2 3 王曼昱 15624 15849 8
3 1 陳夢 15519 16509 8
4 4 石川佳純 14905 14905 8
5 6 伊藤美誠 14180 13955 8
6 10 陳幸同 13065 12957 8
7 8 鄭怡静 12856 13171 8
8 5 劉詩雯 12639 14139 8
9 7 平野美宇 12608 13418 8
10 13 杜凱栞 11940 11940 8
11 17 顧玉婷 11832 10932 8
12 9 馮天薇 11815 13060 8
13 15 徐孝元 11324 11369 8
14 14 佐藤瞳 11223 11604 8
15 16 早田ひな 10845 11115 8
16 18 ポルカノバ 10618 10663 8
17 12 丁寧 10509 12759 6
18 20 加藤美優 10395 10440 8
18 20 李皓晴 10395 10440 8
20 22 芝田沙季 10179 10401 8
? 19 サマラ 10063 10624 8
? 11 孫穎莎 8531 12806 6

ここで、算入数は7月時点での算入大会数になっています。丁寧と孫穎莎は大幅に下がりましたが、算入大会数が6なのであと2大会の獲得ポイントはそのまま加算できます。また、劉詩雯も算入大会数は8大会ですが最低算入ポイントが300ポイントで、次に低いのが900ポイントなので、後半戦で大きなポイントを獲得すればまた一気に上がって来ると思われます。

平野美宇は、今回は下げそうですが昨年の後半はワールドツアーであまりポイントを稼げてない分失効するポイントも限られますので、後半活躍すればまた上位に復活できると思います。まず、7月のワールドツアープラチナの2大会(韓国オープンとオーストラリアオープン)で、上位に進出してほしいです。

2018年6月14日木曜日

張本智和が劇的勝利で優勝:ジャパンオープン

国際卓球連盟のニュースで張本智和のジャパンオープン優勝の記事がビデオ付きで上がってましたので、訳してみました。

張本智和が北九州で劇的勝利で優勝

2018年6月11日
6月10日の日曜日、北九州市で行われた Seamaster ITTF ワールドツアー ライオンジャパンオープンの男子シングルスで、7ゲームの激闘の末に張継科を僅差で破り、日本の張本智和が再び表彰台の最上段に立ち世界を驚かせた(9-11, 8-11, 11-9, 11-4, 10-12, 11-7, 13-11) 。

2度目の優勝、張継科を破り優勝した張本智和(写真:Hideyuki Imai)
中国深圳で行われた先週の中国オープン初日の1回戦での対戦では14歳の張本智和が疑う余地のないストレートで勝った。しかし、今回の対戦では張継科に勝利することがもっと困難なものであることが証明された。

中国オープンでの対戦とは反対に、ジャパンオープンでの最初の2ゲームは張継科が支配し張本に自分の卓球をさせなかった。しかし、第3ゲームを張本が最小ポイント差で取ると、流れは一気に張本のほうに傾き、第4ゲームでは完全に張本が優勢になり、ゲームカウントを2-2のタイに持ち込んだ。

次の2ゲームでは、張継科、張本智和、共に少しの幸運があった。第5ゲームで張継科は8-10とされた後、連続ポイントで追い付きデュースとしたが、このポイントの中には台のバックエッジをかすめるショットがあった。結局、デュースからこのゲームを取った。一方、第6ゲームでは張本もゲームポイントでバックエッジをかすめる球でゲームを取り、勝負を最終ゲームに持ち込んだ。

そして、最も劇的な最終ゲームを迎えた。張継科は、1-5と劣勢だったところから盛り返し、10-9と先にチャンピオンシップポイントを握った。日本の観衆の前で、張本は10-10のデュースに持ち込んだが、その後自分自身のチャンピオンシップポイントも逃してしまった。張本は12-11と再び優勝まであと1ポイントとし、ついにサービスエースで優勝を手にした。張本は喜びのあまり床に突っ伏してしまったが、その後対戦相手とお互いを讃えあって握手を交わした。

張継科のコメント:
「なにしろ、優勝できるところまで来ていたので、ちょっと残念です。しかし、同時に自分にとって受け入れられる結果でした。準決勝で腰を痛めたことを考えると、ほんとうにいいプレーができたと思います。最近あまりプレーしてなかったので、マッチポイントのような重大な場面で冷静さを保ち精神的に強い状態でいることができませんでした。今年のうちに、試合ごとに前の試合よりいい試合ができるようにしていきたいです。今回の3大会(*)の自分の目標はすでに達成できました。また、試合の結果に関係なく、最高の報酬はここで得た教訓です。」
(*訳者注:先々週から3週連続で行われた香港オープン、中国オープン、ジャパンオープンの3大会。香港オープンが約半年ぶりの張継科の復帰戦でした。)

張本智和のコメント:
「ほんとに、ずっとリードされていて苦しい試合だったんですけど、そこで耐えて7ゲーム目逆転して勝った自分にほんとにおめでとうって言いたいです。中国オープンから1週間経って、ほんとに別人のように強くなっていた張継科選手にここで競って勝つことができたことは本当にうれしいです。」

張本智和が手にした彼の名前が刻まれた ITTF ワールドツアー男子シングルスのトロフィーは、これで2個目になる。張本智和は、2013年の塩野真人以来のジャパンオープン男子シングルスの優勝者となった。

張継科にとっては、今回の結果は彼が望んでいた最終結果ではない。しかし、長期間の早期敗退を終わらせるとともに、2016年以来の決勝に進出できたため、ジャパンオープン出場については総じて張継科は喜んでいる。

                          (Simon Daish 記)






2018年6月11日月曜日

卓球 ジャパンオープン 男子シングルスで14歳の張本智和が優勝

 北九州市で行われている卓球の2018ワールドツアーのジャパンオープンの最終日(6/10)に、男子シングルスで中学3年の張本智和が中国選手を倒して優勝した。

 張本智和は、準々決勝でリオ五輪と昨年の世界選手権で優勝している絶対的王者の中国の馬龍、準決勝で昨年の世界選手権で個人3位の韓国の李尚洙(イ・サンス)、決勝でロンドン五輪で金メダルとリオ五輪で銀メダルの中国の張継科と並み居るメダリストを倒しての優勝だった。

・準決勝
張本智和 vs 李尚洙      4-2 (11-5,10-12,11-4,11-5,5-11,11-9)

 張本智和は前日に中国絶対王者の馬龍を倒している。しかし、4月のアジアカップ予選で現在世界ランキング1位の中国の樊振東(ファン・ジェンドン)を倒したあとに本戦の1回戦で韓国の丁祥恩(チョン・サンウン)に簡単に負けてしまっているので、大物を倒した後の試合は要注意である。
 しかし、張本は立ち上がりの悪い李尚洙から1ゲーム目を簡単に取り、試合を有利にすると、2ゲーム目は接戦を落としたものの、3、4ゲーム目を簡単に取り、3-1と決勝進出に王手をかけた。5ゲーム目は勝ちを焦ったか簡単に落とした。6ゲーム目も0-5とリードされたがここから怒涛の5連取で5-5の同点に追いつき李尚洙にタイムアウトを取らせた。タイムアウト後のラリーも張本が制し6-5と逆転したが、その後李尚洙に3ポイントを連取され6-8と再逆転を許した。さらにお互いに1ポイントを交互に重ね7-9となったが、張本がさらに3ポイントを連取し10-9と逆転し先にゲームポイントを握った。そして、最後の1ポイントも取り勝利をものにした。

・決勝
張本智和 vs 張継科    4-3 (9-11,8-11,11-9,11-4,10-12,11-7,13-11)

 張継科はロンドンオリンピックで金メダル、リオオリンピックで銀メダルを取っているメダリストである。しかし、数か月ほど兵役のため競技を離れていて先々週の香港オープンから国際大会に復帰したばかりだ。ランキングも下がってしまったため、先週の中国オープンでは予選から戦い本戦に進出し1回戦で張本智和と対戦している。このときは、張本が4-0のストレートで張継科に勝っている。

 このため、張本が優位との予測もあった。しかし、張継科も復帰後だんだん調子も戻って、その結果が今回の決勝なのでけして油断はできなかった。実際、最初の2ゲームをいきなり取られてしまった。その後2ゲームを返してゲームカウント2-2に戻した張本だが第5ゲームを接戦で落としなかなか並みに乗れない。第6ゲームも0-2とリードされたが、そこから張本が4ポイント連取で4-2とし勢いそのままにこのゲームを11-7で押し切り、最終ゲームに持ち込んだ。

 最終ゲームの張本の最初のポイントはラッキーなネットイン。さらに1ポイントを重ね、その後1ポイントを返されたがさらに3ポイント連取で5-1でコートチェンジと最終ゲームは張本有利に展開するかに見えた。
コートチェンジ後、お互いに1ポイントを取り6-2となった後、張継科が5ポイント連取で一気に6-7と逆転し、会場の勝ちムードが一挙に吹き飛んだ。その後、張本がラリーを征して7-7の同点とするが、張継科の4球目がネットイン、さらに1ポイントを取られ7-9となり、さらに張継科のサーブ順と張継科優位の状況になった。張継科の1本目のサーブは、張本のフォアハンドフリップでのリターンを張継科が台から外しまず8-9とし、次の張継科のサーブは台上のラリーとなったが張本の球がネットイン、そして最後はエッジで決まりラッキーもあったが9-9の同点とした。しかし、次の張本のサーブでリターンを台から外し9-10と張継科に先にマッチポイントを握られてしまった。しかし、ここでくじけないのが張本智和だ。次のラリーを征し、10-10のデュースに持ち込んだ。そして次の張継科のサーブで張本のリターンを張継科が台を外し、今度は張本のマッチポイントになった。しかし、張継科もオリンピックチャンピオンの意地を見せ、次の打ち合いを征し、再度11-11のデュースになった。ここで張本は張継科のロングサーブを回り込んでリターンエースを決め、2度目の張本のマッチポイントになり、最後はサービスエースで優勝を決めた。
 11-11から張継科のロングサーブを回り込んでリターンエースを決めマッチポイントを取ったプレイは張本が試合後のインタビューで200%、300%のプレイと自分をほめたいと言っていたこの試合のキーになったプレイだった。

 張本智和の今回の優勝は昨年の8月のチェコオープンに続く2度目のワールドツアー優勝だ。昨年のチェコオープンも今年3月に世界ランキング1位だったドイツのボルに勝っての優勝なので十分値打ちがあった。しかし、今回のジャパンオープンは1回戦で日本選手キラーの韓国の張禹珍、2回戦で中国の周雨、そして馬龍、李尚洙、張継科と強敵ばかりで、さらに張本の力を証明するものとなった。
 itTVの配信で解説をしていたアダムは、男子シングルスの中でこの大会だけでなく別の大会も含め、もっともすごい試合で、昨日の馬龍との対戦よりすごかった。張本は、将来まちがいなくこれまで見たこともない偉大なプレイヤーになると言っていた。試合中の興奮もあって少し大げさかもしれないが、当たらずも遠からずだろう。張本智和は、14歳(今月27日で15歳)ですでに一流の技術だけでなく、一流の精神力も備えている。確かに大物と言わざるを得ないだろう。

2018ジャパンオープンの詳細についてはこちらをご覧ください。

卓球 ジャパンオープン 女子シングルスで伊藤美誠が優勝

 北九州市で行われている卓球の2018ワールドツアーのジャパンオープンの最終日(6/10)に女子シングルスで高校3年の伊藤美誠が中国選手を倒して優勝した。

 伊藤美誠の準決勝の相手の陳幸同と、決勝の相手の王曼昱は、21歳と19歳と2人とも中国若手のホープである。現在女子の世界ランキング10位以内に中国選手は5人いるが、陳幸同が10位、王曼昱が3位である(ちなみに伊藤は6位である)。また、王曼昱は先週の香港オープン、先週の中国オープンで優勝し3週連続の優勝を狙っていた。

最終日は準決勝と決勝が行われた。

・準決勝
伊藤美誠 vs 陳幸同         4-3 (8-11,9-11,6-11,11-9,11-9,11-7,11-7)

伊藤美誠は最初集中できなかったのかミスが多く3ゲームを連続で取られ、あと1ゲームで敗退という状況になり、しかもその4ゲーム目も4-9とあと2ポイント取られたら万事休すというところまで追い込まれ、もう駄目だなと多くの人が思っただろう。ところが、ここからが今回の伊藤美誠の違うところで、一気に7連続ポイントを取って4ゲーム目を取りゲームカウントを1-3とした。そして、その流れに乗って一気に残り3ゲームを奪ってしまった。4-9の追い詰められたところで急にスイッチが入って集中力が上がったのだろうか。後半3ゲームは、どんどん勢いに乗って相手も圧倒されていた。

・決勝
伊藤美誠 vs 王曼昱      4-2 (11-7,12-10,8-11,11-7,6-11,12-10)

決勝は準決勝で同じ中国の劉詩雯(世界ランキング5位)の王曼昱との対戦となった。

伊藤美誠と王曼昱とは因縁がある。シニアでの対戦成績は2017年と2018年だけで伊藤の5戦5敗である(2014年にも1敗している)。特に昨年6月のジャパンオープンで対戦したときは最初2ゲームを取った後に4ゲームを連取して負け、王曼昱はこれから怪物になる選手で今回が唯一勝てるチャンスだったのにと言って大泣きしたのである。そして、先々週からの香港、中国、日本でのアジアでのワールドツアー3連戦(中国はプラチナ)で、最初の香港オープン、次の中国オープンと2回連続で準決勝で王曼昱と当たり敗退している。特に香港では最初に2ゲーム取り、1ゲームを返された後、1ゲーム取ってゲームカウント3-1とリードしながら3ゲーム連取されて負けている。
 昨年のジャパンオープンや先々週の香港オープンのように、最初に2ゲーム取ったあとに王曼昱に逆転されるケースが多いので、今回も2ゲーム連取した後に1ゲーム返された時には、また同じパターンになるのではいなかと心配した。その後伊藤が1ゲームを取りゲームカウントを3-1とし、また1ゲームを返されゲームカウント3-2となり、さらに6ゲーム目も10-8でゲームポイントを王曼昱に握られた。このゲームも取られるとゲームオールとなり香港オープンと同じ展開になるが、伊藤はここで粘りラリーで横に振り1ポイントを返し10-9とした。緊張感を和らげるために笑みを浮かべた伊藤は、ロングサーブを読んで回り込んでレシーブエースを決め10-10のデュースに持ち込んだ。ここでサーブ順の伊藤は王曼昱のレシーブを緩い球で返し、スピードの遅いラリーに持ち込み王曼昱がネットにかけて伊藤が11-10とマッチポイントとした。ここで伊藤はまた笑みを浮かべいつも以上にぴょんぴょんと跳ね緊張をほぐして王曼昱のサーブを待った。そして、伊藤のレシーブを返した王曼昱の球が台をオーバーした瞬間に伊藤美誠の優勝が決まった。
 伊藤美誠は、5月の世界選手権の決勝でゲームオールで8-10で劉詩雯マッチポイントを握られたときも、今回と同じように4ポイント連取で逆転し勝っている。この精神力のタフさが心臓に毛が生えていると言われる伊藤美誠の真骨頂だろう。しかし、いかに伊藤と言えどもプレッシャーがかからないわけではない。そのプレッシャーを感じなくさせるのが伊藤の母がいつもいう試合を楽しむ心を持つことであるのかもしれない。また、伊藤は緊張をほぐすために笑みを浮かべるのも、やはり母の指導らしい。そして、ピョンピョン跳ねるのもまた緊張をほぐすためだろう。技術的に競った選手同士の試合は、技術力より精神力の勝負である。プレッシャーを跳ね除け、いかに普段の力を出せるかが勝負の分かれ道だ。
 伊藤美誠は昨年のジャパンオープンで王曼昱に逆転負けしたときに王曼昱を「怪物」と評した。王曼昱はその言葉通り、今年のハンガリーオープン、香港オープン、中国オープンで優勝し、世界ランキングも3位に上げていた。伊藤はその怪物に勝ったのだから、伊藤も怪物になったのだろうか。

2018ジャパンオープンの詳細についてはこちらをご覧ください。

2018年6月10日日曜日

14歳の張本智和が馬龍を撃破、卓球 2018ジャパンオープン

 北九州市で行われている卓球のジャパンオープン2日目(6月9日)に張本智和がまたも卓球界を震撼させる快挙を成し遂げた。

 この日午前中に行われたシングルス2回戦で中国の周雨に4-0のストレートで勝っていた張本智和はこの日最後の19:30に行われた準々決勝でリオオリンピックと昨年の世界選手権の金メダリストで現在世界ランキング2位の中国の馬龍と対戦した。

 張本智和は初めから得意のバックハンドで積極的に攻め、1ゲーム目を11-8で奪うと、勢いそのままに11-9、11-7と奪い、王者馬龍相手にゲームカウント3-0と王手をかけた。さすがに、馬龍はこのままで終わらせず第4ゲームを11-3、第5ゲームを11-2と2ゲームで張本に5ポイントしか与えずここから一気に巻き返すかに見えた。また、張本も勝ちを意識したのかもしれない。第6ゲームでは第1ゲームから第3ゲームと同じ展開に戻り張本がまた攻め続けとうとう11-6で王者馬龍に勝った。

 張本は約3年前にワールドツアーに挑戦し始めたころに一度馬龍との対戦があるがそのときはまだ体も小さくまったく歯が立たなかった。3年越しのリベンジに成功し、馬龍とは1勝1敗の5分となった。

試合後の張本智和のインタビュー:
「自分のサービスが効いていて、そこから五分五分ぐらいだったので、ほんとにいい出だしでした。簡単に2ゲーム取られてしまったので6ゲーム目なんとか競って、競って競って4-2で勝ちたいと思ってたので、そこでしっかり粘ることができました。まだ、1回勝っただけなので。今大会まだ準決勝、決勝が残ってるし、これからもたくさん試合があるので、またずっと勝てるように、また頑張りたいです。」

試合後の馬龍のインタビュー:

「この3年間、張本は一生懸命練習して非常に上手くなっている。 また、多くの世界のトッププレイヤーと戦うことで上達している。今日はあまりうまくプレイできなかった。 不必要なミスが多く、相手はリードし続けることができた。」


(インタビューは次のITTFWORLD のビデオより)

張本智和は、昨年の快進撃では水谷隼やドイツのボルには勝ちましたが、さんざん中国の許昕に当たり勝てず、他の中国選手にも負けていました。

 最初に中国選手に勝ったのは(ジュニアは除く)、今年4月のアジアカップの予選でいきなり世界ランキング1位の樊振東(ファン・ジェンドン)に勝ったのが最初でした。そして、先週の中国オープン(先週)で張継科を倒し、昨日の2回戦で周雨、準々決勝で馬龍と立て続けに3か月で4人も倒してしまいました。1人でも倒すのが大変なのに驚異的スピードです。今回、決勝に進めば張継科と再度対戦する可能性があります。

2018年6月2日土曜日

2018中国オープン 芝田沙季が朱雨玲に、浜本由惟が孫穎莎を破る、日本旋風の本戦2日目

中国深圳でワールドツアープラチナの2018中国オープンが開催されています。その2日目の昨日に行われた女子シングルス2回戦で、芝田沙季がトップシードの中国の朱雨玲(ジュ・ユーリン)を破り大金星を上げました。

試合では、4ゲームまでで朱雨玲がゲームカウント3-1であと1ゲームで勝利と王手を懸けていましたが、そこから芝田選手が攻めて3ゲームを連取し大逆転しました。芝田沙季は、前日の1回戦では第10シードの韓国の徐孝元(ソ・ヒョウォン)に勝っていて、昨日の夜に行われた準々決勝では韓国の田芝田(チョン・ジヒ)にも勝って準決勝進出を決めました。準決勝は今日、中国の丁寧と対戦します。芝田選手は今回自主参加枠で予選からの出場で火曜日と水曜日の予選を勝ち抜いて昨日木曜日からの本戦に進出していました。

女子シングルス2回戦 芝田沙季 vs 朱雨玲 4-3(5-11,11-9,7-11,8-11,11-9,11-8,11-5)

また、昨日行われた女子シングルス1回戦で第13シードの中国の孫穎莎(スン・インシャ)と対戦した浜本由惟は、ゲームカウント3-0とリードされてから4ゲームを連取するというなかなか見ない大逆転を演じました。孫穎莎はみうみまと同じ2000年生まれですが昨年6月のジャパンオープンで初めてのシニアの大会出場でいきなり優勝し続く中国オープンで準優勝し世界ランキングトップ10にも一時入っていたという強者です。浜本由惟も、芝田沙季と同じく自主参加で火曜日の予選から戦い本戦に進出していました。2回戦では、石川佳純と対戦し残念ながら敗退しました。

女子シングルス1回戦 浜本由惟 vs 孫穎莎 4-3(8-11,4-11,5-11,11-6,11-6,11-8,11-5)

また、男子シングルス1回戦では張本智和が中国の張継科と対戦しました。張本智和は最新の5月の世界ランキングでは10位です。一方、張継科は今回予選から開始ですが、これはしばらく兵役に服していて大会に出場しておらず先週の香港オープンからツアーに復帰したため世界ランキングが下がっているためです。その前は、トップ10に名を連ねるバリバリの中国トップ選手でした。ただ、今回はまだ完全に復調していないためか、張本智和の一方的な試合になり張本智和がストレートで勝ちました。張本はその後の2回戦でも中国トップ選手の世界ランキング5位の林高遠と対戦しこちらは負けてしまいました。

男子シングルス1回戦 張本智和 vs 張継科 4-0 (11-8,11-3,11-8,11-6)
男子シングルス2回戦 張本智和 vs 林高遠 1-4 (2-11,8-11,10-12,11-7,4-11)

その他にも佐藤瞳が世界ランキング9位のシンガポールの馮天薇に4-1で勝ち(準々決勝で丁寧に敗退)、伊藤美誠が中国の武楊を4-0で破っています。

中国オープンの詳細はこちらのページをご覧ください。

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