2018年6月11日月曜日

卓球 ジャパンオープン 女子シングルスで伊藤美誠が優勝

 北九州市で行われている卓球の2018ワールドツアーのジャパンオープンの最終日(6/10)に女子シングルスで高校3年の伊藤美誠が中国選手を倒して優勝した。

 伊藤美誠の準決勝の相手の陳幸同と、決勝の相手の王曼昱は、21歳と19歳と2人とも中国若手のホープである。現在女子の世界ランキング10位以内に中国選手は5人いるが、陳幸同が10位、王曼昱が3位である(ちなみに伊藤は6位である)。また、王曼昱は先週の香港オープン、先週の中国オープンで優勝し3週連続の優勝を狙っていた。

最終日は準決勝と決勝が行われた。

・準決勝
伊藤美誠 vs 陳幸同         4-3 (8-11,9-11,6-11,11-9,11-9,11-7,11-7)

伊藤美誠は最初集中できなかったのかミスが多く3ゲームを連続で取られ、あと1ゲームで敗退という状況になり、しかもその4ゲーム目も4-9とあと2ポイント取られたら万事休すというところまで追い込まれ、もう駄目だなと多くの人が思っただろう。ところが、ここからが今回の伊藤美誠の違うところで、一気に7連続ポイントを取って4ゲーム目を取りゲームカウントを1-3とした。そして、その流れに乗って一気に残り3ゲームを奪ってしまった。4-9の追い詰められたところで急にスイッチが入って集中力が上がったのだろうか。後半3ゲームは、どんどん勢いに乗って相手も圧倒されていた。

・決勝
伊藤美誠 vs 王曼昱      4-2 (11-7,12-10,8-11,11-7,6-11,12-10)

決勝は準決勝で同じ中国の劉詩雯(世界ランキング5位)の王曼昱との対戦となった。

伊藤美誠と王曼昱とは因縁がある。シニアでの対戦成績は2017年と2018年だけで伊藤の5戦5敗である(2014年にも1敗している)。特に昨年6月のジャパンオープンで対戦したときは最初2ゲームを取った後に4ゲームを連取して負け、王曼昱はこれから怪物になる選手で今回が唯一勝てるチャンスだったのにと言って大泣きしたのである。そして、先々週からの香港、中国、日本でのアジアでのワールドツアー3連戦(中国はプラチナ)で、最初の香港オープン、次の中国オープンと2回連続で準決勝で王曼昱と当たり敗退している。特に香港では最初に2ゲーム取り、1ゲームを返された後、1ゲーム取ってゲームカウント3-1とリードしながら3ゲーム連取されて負けている。
 昨年のジャパンオープンや先々週の香港オープンのように、最初に2ゲーム取ったあとに王曼昱に逆転されるケースが多いので、今回も2ゲーム連取した後に1ゲーム返された時には、また同じパターンになるのではいなかと心配した。その後伊藤が1ゲームを取りゲームカウントを3-1とし、また1ゲームを返されゲームカウント3-2となり、さらに6ゲーム目も10-8でゲームポイントを王曼昱に握られた。このゲームも取られるとゲームオールとなり香港オープンと同じ展開になるが、伊藤はここで粘りラリーで横に振り1ポイントを返し10-9とした。緊張感を和らげるために笑みを浮かべた伊藤は、ロングサーブを読んで回り込んでレシーブエースを決め10-10のデュースに持ち込んだ。ここでサーブ順の伊藤は王曼昱のレシーブを緩い球で返し、スピードの遅いラリーに持ち込み王曼昱がネットにかけて伊藤が11-10とマッチポイントとした。ここで伊藤はまた笑みを浮かべいつも以上にぴょんぴょんと跳ね緊張をほぐして王曼昱のサーブを待った。そして、伊藤のレシーブを返した王曼昱の球が台をオーバーした瞬間に伊藤美誠の優勝が決まった。
 伊藤美誠は、5月の世界選手権の決勝でゲームオールで8-10で劉詩雯マッチポイントを握られたときも、今回と同じように4ポイント連取で逆転し勝っている。この精神力のタフさが心臓に毛が生えていると言われる伊藤美誠の真骨頂だろう。しかし、いかに伊藤と言えどもプレッシャーがかからないわけではない。そのプレッシャーを感じなくさせるのが伊藤の母がいつもいう試合を楽しむ心を持つことであるのかもしれない。また、伊藤は緊張をほぐすために笑みを浮かべるのも、やはり母の指導らしい。そして、ピョンピョン跳ねるのもまた緊張をほぐすためだろう。技術的に競った選手同士の試合は、技術力より精神力の勝負である。プレッシャーを跳ね除け、いかに普段の力を出せるかが勝負の分かれ道だ。
 伊藤美誠は昨年のジャパンオープンで王曼昱に逆転負けしたときに王曼昱を「怪物」と評した。王曼昱はその言葉通り、今年のハンガリーオープン、香港オープン、中国オープンで優勝し、世界ランキングも3位に上げていた。伊藤はその怪物に勝ったのだから、伊藤も怪物になったのだろうか。

2018ジャパンオープンの詳細についてはこちらをご覧ください。

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