この来年1月の世界ランキングは今年1年間に出場した国際大会と昨年の世界選手権の獲得ポイントで決まる。このため、来年1月の世界ランキングの対象になる大会での獲得ポイントをランキングポイントの方法に従って計算したのが「東京オリンピック代表への道」に載せている積算ポイントで、現在は張本智和がダントツのトップでそれを水谷隼と丹羽孝希が追う形になっている。水谷隼と丹羽孝希の差は少ないが、4位以下は大きく離れているため実質水谷隼と丹羽孝希の2位争いという構図だ。
この3選手の9月7日現在の積算ポイントは以下のようになっている。
1月のポイント | 張本智和 | 水谷隼 | 丹羽孝希 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
① | 1800 | ブルガリアOP | 1500 | 2018WTTC | 1500 | 2019WTTC |
② | 1465 | 中国OP | 1125 | カタールOP | 1170 | アジアカップ |
③ | 1440 | 香港OP | 900 | ジャパンOP | 900 | 中国OP |
④ | 1250 | 2018WTTC | 900 | 香港OP | 900 | カタールOP |
⑤ | 1200 | 2019WTTC | 900 | 中国OP | 750 | 2018WTTC |
⑥ | 1125 | カタールOP | 900 | 2019WTTC | 720 | 香港OP |
⑦ | 1080 | アジアカップ | 900 | ブルガリアOP | 675 | 豪州OP |
⑧ | 900 | 韓国OP | 720 | チェコOP | 675 | ジャパンOP |
T2マレーシア | 400 | 400 | 400 | |||
T2シンガポール | ||||||
10660 | 8245 | 7690 |
また、今年年内に行われるワールドツアー以上の主要大会で残っているのは以下の8大会で、3選手の各大会へのエントリー状況、および獲得できるポイントは以下のようになっている。
大会 | 開始日 | 張本 | 水谷 | 丹羽 | ベスト8 | ベスト4 | 準優勝 | 優勝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アジア選手権 | 9月15日 | 〇 | × | × | 900 | 1170 | 1350 | 1800 |
スウェーデンOP | 10月1日 | 〇 | 〇 | 〇 | 900 | 1170 | 1440 | 1800 |
ドイツOP | 10月8日 | 〇 | 〇 | 〇 | 1125 | 1465 | 1800 | 2250 |
チームワールドカップ | 11月6日 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
オーストリアOP | 11月12日 | 〇 | 〇 | 〇 | 1275 | 1465 | 1440 | 2250 |
T2マレーシア | 11月21日 | 〇 | 〇 | 〇 | 500 | 600/700 | 800 | 1000 |
男子ワールドカップ | 11月29日 | 〇 | × | 〇 | 1275 | 1530/1660 | 800 | 1000 |
グランドファイナル | 12月12日 | 〇 | 〇 | 〇 | 1275 | 1660 | 2040 | 2550 |
ここで水谷隼が男子ワールドカップにはエントリーしていないことがわかる。これは、男子ワールドカップに出場できるのは各国2名でかつ予選を兼ねている各大陸のカップ戦(アジアはアジアカップ)に出場していることが出場条件のためだ。また、アジア選手権には、水谷隼と丹羽孝希がエントリーされていない。丹羽孝希は会期が重なっているパラグアイオープンにエントリーしているためと思われるが水谷隼については不明だ。
丹羽孝希がエントリーしているパラグアイオープンはチャレンジプラスシリーズの大会で優勝ポイントが1100ポイントあるが、南米のためか男子シングルスのエントリーが50名ほどで丹羽以外で最高世界ランキングは32位の選手なので、丹羽は出場すれば優勝の可能性が大きい。現状1000ポイント以上が2個しか取れていない丹羽にとってはこの優勝ポイントは価値がある。また、丹羽は4月のアジアカップで3位で1170ポイントを獲得している。ランキングポイントに算入する8大会には各大陸のカップ戦と各大陸の選手権(アジアの場合はアジア選手権)のポイントはどちらか一方しか算入できないので、丹羽がアジア選手権での獲得ポイントを算入するには1170を超えるポイントが必要でこれは決勝に進出しなければならないことを意味する。つまり、丹羽孝希はアジア選手権で決勝に進出するよりもパラグアイオープンで優勝する方が確率が高いとしてパラグアイオープンにエントリーしたと考えられる。ただし、準優勝だと880ポイントなので意味がなくなる(ランキングポイントの計算方法については2019年の世界ランキングシステムの説明を参照)。
また水谷隼の出場しない男子ワールドカップでのポイントも気になる。昨年も張本智和と丹羽孝希が出場しベスト16が出場できるステージ2には問題なく進んだが二人とも準々決勝で敗退している。そこで、このシミュレーションでは二人の結果を昨年同様に準々決勝敗退とし1275ポイントと仮定する。
残りの大会は3選手ともすべてベスト8と仮定したいと思う。。
このような仮定で最初の表を計算しなおすと以下のようになる。
張本 | 水谷 | 丹羽 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
① | 1800 | ブルガリアOP | 1500 | 2018WTTC | 1500 | 2019WTTC |
② | 1465 | 中国OP | 1125 | カタールOP | 1170 | アジアカップ |
③ | 1440 | 香港OP | 900 | 2019WTTC | 900 | 中国OP |
④ | 1250 | 2018WTTC | 900 | 中国OP | 1000 | パラグアイOP |
⑤ | 1200 | 2019WTTC | 900 | ブルガリアOP | 1125 | ドイツOP |
⑥ | 1125 | カタールOP | 1125 | ドイツOP | 1275 | 男子WC |
⑦ | 1275 | 男子WC | 1125 | オーストリアOP | 1125 | オーストリアOP |
⑧グランドファイナル | 1275 | 1275 | 1275 | |||
T2Dマレーシア | 400 | 400 | 400 | |||
T2Dシンガポール | 500 | 500 | 500 | |||
1月のポイント | 11730 | 9750 | 10370 |
上の表で赤字の数字が今後開催される試合の仮想ポイントになる。丹羽孝希に不確定なポイントが多いものの、丹羽は水谷隼を上回るために戦略的に出場大会を選んでいることがわかるだろう。丹羽はパラグアイオープンで優勝し、ワールドカップで昨年以上の結果を残し、ワールドツアー/プラチナとグランドファイナルで水谷と大差がつかなければ東京オリンピックのシングルス代表が見えてくる。
一方、水谷隼はワールドツアー/プラチナとグランドファイナルと丹羽に差を付けなければ東京オリンピックのシングルス代表の座は見えてこない。
水谷と丹羽には不確定なポイントが多いので各大会の実際の結果でこのシミュレーションも微妙に変わってくるだろうが、男子ワールドカップは1つのチェックポイントになるだろう。
なお、シミュレーションではチームワールドカップを外している。チームワールドカップは団体戦で戦われるが団体戦の中でのシングルスの1勝は250ポイントに数えられる。つまり、大会中に5勝すればチームワールドカップのポイントは1250ポイントになるので無視できるポイントではない。また、1人の選手に2点起用が集中すると1人だけポイントが多くなることもある。今年は各大会の獲得ポイントが東京オリンピック代表の選考に関わってくるので、もちろん倉嶋監督は優勝を狙うための最善の起用を考えるだろうが、そのために2点起用が1人の選手に集中して代表選考に影響を与えないように望みたい。
同様のシミュレーションについては、こちらの9月の世界ランキングのトピック(こちらを参照)でも説明している。